データからストーリーを引き出すためのテクニック9選
以下の文章は執筆者のPatrick Nguyenさんからの許可を得て翻訳したものです。
はじめに
前回の記事「データから洞察を引き出す方法」で示した3段階のプロセスを基に、今回はデータからストーリーを引き出す多彩なテクニックについて深めていきます。
例えば、マーケティング部門から新規顧客に関するデータセットの分析を任されたとします。どのデータポイントからアプローチを始めるべきか、ストーリーを見つける上での最良の視点はどこか、そしてデータセット内の全てのポイントを網羅する方法を保証するにはどうすればよいかを考えなくてはなりません。
本記事では、データセットからストーリーを効果的に引き出すための9つのテクニックを紹介します。これらのテクニックは主にデータ可視化に基づいており、データセットを全体的かつ包括的に理解するのに役立ちます(実際、一枚の画像には計り知れない情報が詰まっているものです)。
テクニック1: 時間経過による変化 (時系列分析):
データを時間軸に沿ってプロットするとき、特に時系列データを分析する際に、トレンドを特定することができます。これらのトレンドは時間の経過とともに上昇や下降を示すか、あるいは季節的なパターンを形成する可能性があります。
テクニック2: 変数間の関係性の特定:
通常、変数間に相関関係が存在すると、データストーリーはより魅力的になります。このアプローチで探求する際はヒートマップや動的チャート、散布図などのグラフが有効です。
テクニック3: 交点:
場合によって、変数が特定の点で交差し、交点を生じさせることがあります。この交点から得られる洞察には非常に価値があります。例えば、財務ではコストと収益の交点にあるブレークイーブンポイントで利益や損失が決定します。また、経済学では、供給曲線と需要曲線が交差する点が均衡価格を示します。代表例としては、以下の画像のようなブレークイーブンチャートがあります。
テクニック4: 予測:
「予測」の代表例としては、過去のデータやトレンドのパターンを使用して、特定の期間における企業の売上高を推定するものがあります。この売上予測は企業のリソースの割り当てや支出の最適化に役立ちます。
多くのデータアナリストは、このテクニックをテクニック2で取り上げた相関チャートと組み合わせて使用し、予測とトレンドに影響を与える変数を識別します。例えば、マーケターは売上高というファクターとマーケティングキャンペーンというファクターの相関関係を調査することでトレンドを予測することができます。
テクニック5: 比較と対照:
このテクニックは、異なる観察対象間のパターンや行動を比較し、明らかにすることが目的です。例えば、リピート顧客と失客という二つの顧客グループを分割し、比較することです。これにより、顧客ロイヤルティを育むパターンを特定するとともに、顧客が企業から離れてしまう可能性のある懸念点も取り上げることができます。
この比較アプローチの興味深い例を以下に示します。こちらの画像は、犬と猫の違いを強調しています:
テクニック6: ドリルダウンテクニック:
このテクニックは、広範囲な概観から詳細まで、さまざまな視点や角度から問題を調査することを可能にします。例えば、製品自体を直接分析するのではなく、関連するカテゴリー全体やサブカテゴリーのパフォーマンスを詳細に調べることなどです。
テクニック7: ズームイン/ズームアウト:
こちらは、多くの可視化ツールやビジネスインテリジェンスツールで利用できる機能です。ユーザーはチャートを拡大・縮小することで、表示する情報の詳細度を調整します。この機能は、大規模なデータセットを層ごとに構造化して理解を深める際に特に有用であり、ドリルダウンテクニックと並行してデータをさまざまな詳細度で調査することができます。
テクニック8: クラスタリング:
このテクニックは、異なるデータセット間の相対的な比較を視覚化するのに役立ちます。データはクラスタに分かれ、これによりどのデータセットが最も重要かを強調できます。この方法はカテゴリ別のデータを視覚化する際に特に有効です。
たとえば、特定の顧客セグメントの年収と支出スコアを示す以下のチャート、「ショッピングモール顧客のセグメント」で考えてみましょう。最も高い年収と支出スコアを持つクラスタは、ショッピングモールの最も重要な顧客グループであることが示唆されています。
また、クラスタ化された棒グラフを利用することで、四半期毎の地域別売上データのような、時系列によって変わるデータの比較も簡単にできます。
これにより、各クラスタや地域の年次成長のトレンドやその重要性をすぐに理解することができます。
テクニック9: 外れ値
外れ値とは、データセットの中で他の値から異常に離れた位置にある観測値のことを指します。統計的モデリングの際、外れ値はモデルの精度を低下させる可能性があるため、データ科学者やアナリストは外れ値の取り扱いに注意を払います。しかし、外れ値が実際には有益な情報を提供することもあるので、削除する前に注意深く検討する必要があります。以下、具体的なシナリオを2つ挙げます:
-
タイプミスや入力ミスが原因で外れ値が生まれた場合、その値はデータから取り除く方が良いでしょう。例えば、年齢が40歳のはずなのに、4歳と間違って入力されるようなケースです。
-
外れ値が正確なデータである場合には、外れ値を含めたデータセットと含めないデータセットの両方を評価し、その後で結果を比較することが重要です。さらに、なぜそのような外れ値が出現したのかを深く調査することも重要です。外れ値を特定するためには散布図や分布図、ヒストグラムがよく用いられます。
まとめ:
本記事において紹介した9つの手法が、あなたのデータストーリーにおける様々なデータ要素を効果的に特定し、情報と視点の伝達を最適化するサポートとして役立つことを願っています。